只、静かなる所を終の住処とせん為に

或る男(あるお)です。主に無知な男が詠んだ拙い俳句を載せております。添削・ご指導、ご感想などをコメントに頂ければ幸いです。

焼き秋刀魚辛いおろしに父想う

昔よく父が言っていた。「秋刀魚には、辛い大根おろしがよく合うんだ」と。
そんな頃を思い出し、詠んだ句である。

 

この句に関して、悪い点へのアドバイス等、コメントくだされば幸いです。もちろん、良い点(があればですが)のコメントも歓迎しております。

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秋刀魚は、私にとって最も秋を感じさせる魚だ。

茸や鮭も好きだが、子供の頃から大好きな魚。そのコストパフォーマンスたるや、半端なものではない。佃煮もいいがやはり秋刀魚は焼き秋刀魚に限る。次点は鮭。

 

そういえば、魚を食べる時の中骨の取り方も教えてくれたのは父だった。
背骨に沿って箸を入れ、半身ずつ上下に開く。むき出しになった中骨を、頭と尻尾ごと取り出す。

父はそこに、これでもかというぐらい大根おろしを乗せていた。汁も切らず、秋刀魚が大根の湖の上に浮かび、おろしの雪が秋刀魚を覆い尽くす。
秋なのに、冬を予感させるような食べ方。
そしてあの決め台詞。
食べ終わると、秋刀魚の脂と醤油がとけ込んだ大根の汁を一滴残らず平らげる。

決して上品な食べ方ではないが、そこにある種の格好よさを感じていた。今では全く同じ食べ方で、私も秋刀魚の残り汁をすすっている。

 

この句を詠んだ頃は、秋の季語を兼題として出されたときだった。当時私は、実家から遠く離れた地で暮らし、ふと食べた秋刀魚を見て、このことを思い出した。

今は実家の近くに引っ越してきており、父との距離は物理的に縮まっているが、食卓に秋刀魚が並ぶ度、近くにいるのに望郷の想いがこみ上げる。

 

私の中で、秋刀魚はそこまでの食べ物となってしまった。
皆さんにも、こんな食べ物はあるだろうか。

 

或る男